*その他のオランダ血統 第2弾*

〜〜オランダ長距離界のもう一つの主流系統〜〜
ファン・ヴァン・ローイ(Sjef van Wanroy)鳩舎の紹介

 ファン・ヴァン・ローイ鳩舎
(=以降ワンロイ鳩舎)は、オランダ北東部、ブルックハイゼンフルスト町にあった。ワンロイは、ヤン・アールデンと同様に、死後その名声が高まったことで共通する点がある。ワンロイは、南西部の鳩舎に比べると、200キロも余計に飛ばさなければならないハンディキャップにもかかわらず、長期にわたって好成績を納め続けた。少数精鋭の鳩群で、バルセロナを始めマルセイユ、ポー、ダックス等のナショナルレースで優入賞を果たしている。その記録の一部を紹介する。

◆バルセロナN  1200k 1位、3位他

◆サンバンサンN 1050k 1位、2位、7位

◆ダックスN    1050k 1位、2位、9位

◆ポーN      1030k 3位、4位

◆マルセイユN   920k 1位、4位

◆シャトローN    680k 1位   

 ワンロイは、15年間に182回におよぶタイトルを手中にしたといわれる。ワンロイの代表鳩と言えば、”ド・90”(H63−1151390)である。このCH鳩は、ダックス、ポー、サンバンサンで上位入賞した。しかも、サンバンサンナショナルは、7歳という高齢で7位入賞を果たしている(同レースで娘鳩は2位)。また、現役後もブリーダーとして、その重鎮たるや凄まじく、直系の活躍は洋の東西を問わず、世界各地より輩出が続いている。

主な翔歴)
 ◆ダックスN     11位、34位
 ◆ポーN       125位
 ◆サンバンサンN   7位、34位、36位など25回入賞

 *参考文献:愛鳩の友1977年5月号、1992年4月号
  *Photoの引用は【http://www.vanwanroy.com/】より

 ※次回は、ワンロイ系の系源をたどり、ワンロイ鳩舎の代表鳩を紹介します。


             〜〜 平成16年8月17日(火)一部改 〜〜

 

連載第2弾はワンロイ鳩舎の代表鳩の紹介です。

Wanroy系の系源をたどると以下の3つのラインから構成されていることがわかります。(【http://www.vanwanroy.com/】より

 1)Hansenne
   ハンセーヌ系(ベルギー)
 2)Hornstra
   ホーンストラ系(オランダ)

 3)Delber van Staf Dusarduyn
   デルバール系(ヂュッサルダインの)

超銘鳩と言われる”ド・90”の血統を見ることで、その系源を探ってみたいと思います。

【ド・90の翔歴】
サンバンサン
Nat.総合4位、7位、36位、184位
ダックスNat.総合11位、34位、125位、139位
ポーNat.総合40位他

現在では、ワンロイと言えば”ド・90”と言うくらいにワンロイ血統には”ド・90”の血が流れています。そんな中で、現在の飛び筋を形成している3本のラインを紹介します。

@ ”Maaskantkampioen 372” × de beroemde ”90”

”Maaskantkampioen 372”H63-1151372の血統構成
 
この鳩は、1965年のマースカント地区CHであった。
 
父)H60-1020374 BLKC
  祖父)H55-785447
  祖母)H51-561448 Hornstra
 母)H62-627717 DC
  祖父)H56-602862 Hansenne
  祖母)”433”

余談になるが、アスカロフトには”ド・90”の孫が在舎していた。その鳩は1991年生れのヘンドリクス作の”Maaskantkampioen 372” × de beroemde ”90”の近親孫であった。現在は、その直子が種鳩として在舎している。

A De fameuze “Westerhuis” H66-1542624” × de beroemde ”90” 

 
このペアの直子には、有名な Het”Hartje”H67-821896 (1. Nat. St. Vincent. Z.1970)やHet”Elfje”(3. Nat. St. Vincent 1976)がいる。

B ”113” ×  ”Spin”
 
”113”は”ド・90”の全姉妹でH64-104113である。この鳩は、1967年バルセロナNat.総合3位(IN10位)に入賞している他、直系がボルドーNat.で総合優勝している。
 また、”Spin”H67-821892は上記のAの直子である”De 103”H68-1100103との間に、近代オランダ鳩界を代表する『カイパー兄弟鳩舎』や『ファンデンアインデン兄弟鳩舎』に重要な鳩を輩出している。

*Photoの引用は【http://www.vanwanroy.com/】より

 ※次回は、『ヤン・アールデン』と系源を同じに持ち、他鳩舎で重要な位置を占めた”Spin”の血を紹介します。

             〜〜 平成16年11月28日(日) 〜〜

 

※ 連載第3弾はワンロイ鳩舎の代表鳩で『ヤン・アールデン』と系源を同じに持ち、他鳩舎で重要な位置を占めた”Spin”の血を紹介します

ワンロイ鳩舎の作出鳩で、見逃してはならない鳩に”Spin”(H67-821892)を上げる事ができます。自身がサンバンサンN6位という華麗な翔歴を有し、上述のAの直子である”De 103”H68-1100103との間に、近代オランダ鳩界を代表する『カイパー兄弟鳩舎』や『ファンデンアインデン兄弟鳩舎』に重要な鳩を輩出しました。この”Spin”(蜘蛛の意味)は下記血統図でわかるように、”Oud Vosje”の孫娘になります。”Oud Vosje”の系統図も下に記しましたが、有名なJan Aarden作翔の50年生れの代表鳩と近縁の関係を見ることが出来ます。すなわち、その父親の”Het Witpen Doffertje”と全兄弟姉妹の関係になるのです。つまりこの2羽の兄弟姉妹は、今さら言及することもありませんが、”ド・86””ヘット シルバー・フォスイエ”のゴールデンペアの直子になります。 

 今回の系統図を作るに当たり、”Spin”の直子&祖先については、J.B.HendriksのトータルオークションBookを参考にしました。また、”Oud Vosje”の系統に関しては、CHダイジェスト誌1985年6月号より引用しました。

次回最終回は、J.B.Hendriksの代表鳩である1980年のバルセロナN&IN総合優勝鳩である”De Barcelona”を紹介します。

〜〜 平成16年12月29日(水)雪の降る日 〜〜

 

最終回第5弾は、ワンロイの死後そのほとんどの鳩達がJ.B.Hendriks(ヘンドリクス氏)の元へ流れた。その中で、ヘンドリクス氏が作翔したバルセロナN&IN総合優勝鳩を紹介したい。

 ヘンドリクス鳩舎は、1946年以降、毎年オランダ東北地区でCH鳩を作出していたが、1973年に10羽の種鳩とともに、現在のツエロ−に新居を構え、再び飼育を始めました。彼は、1970年と1971年にワンロイ鳩舎からド・90の直子2羽を含む10羽の若鳩を導入しています。その結果は早くもシャトロー850羽中1位やベルジェラック1位となって現れたのです。
 ワンロイは1974年にこの世を去るまで200回近い栄冠を勝ち取っています。1964年バルセロナN総合優勝(ド90の父)、1965年のサンバンサンN総合優勝、その他マルセイユN総合優勝など輝かしい成績を残し、1970年にはド・90の直子である”ハルチェ号”によりサンバンサンN総合優勝を飾っている。ハルチェ号は、ワンロイが亡くなった1974年のダックスNにおいても7歳にして7.460羽中7位という成績を残している。ちなみに、ド・90は17歳まで直子を残していることがヘンドリクスのオークションBookからわかる(NL80-2127939♀:372×ド・90)。

ワンロイ亡き後、彼の鳩はほとんどヘンドリクス氏によって買い取られました。この中にはド・90を始め、その直子17羽も含まれていて、こうしてワンロイの遺産は完全にヘンドリクス氏によって継承されました。ヘンドリクス鳩舎で華やかにレースを飾ったのが、1980年のバルセロナIN総合優勝でしょう。”Barcerona”NL76-1194042 BC は、13.636羽中の頂点に立ったのです。この優勝鳩は、ワンロイから生前に譲り受けた2羽からヘンドリクス氏によって作出されたもので、この2羽はド・90の血筋であり、内1羽は直子であった。
 ヘンドリクス氏は、17年間525鳩舎を擁するアペルドールン地区にあって、短・中・長距離の全てにわたりチャンピオンの座を保持していた。が、1977年に518鳩舎を擁するデーヴェンテル地区に移って再びチャンピオンの座を勝ち取るのに3年を必要とした。この間、短・中距離レースをあきらめて長距離レースに専念することを心に決めたのであった。それゆえ、1980年のバルセロナIN(1.243km)13.636羽中総合優勝という成績は、オランダ長距離界においてワンロイ系の卓越した能力の証であり、その後継鳩舎としてヘンドリクス鳩舎の名をあらためて世界に知らしめたのであった。
 現在は、ご子息のベン氏(Ben Hendriks)が父の後を引き継いでいる。【http://www.vanwanroy.com/】

【”Barcerona”NL76-1194042の血統】

参考文献:愛鳩の友誌1977年5月号、CHダイジェスト誌1983年2月号、
      ヘンドリクスのトータルオークションBook

 

アスカロフトにはド・90の孫が在舎していました。下記の血統書を見ていただくとわかりますが、この1991年生れの鳩の母親は、上記”Barcerona”NL76-1194042の母親と全姉妹の関係になる。この鳩は、2000年11月の北海道修学鳩旅行でデカ橋さんの友人である某鳩舎にいたものを、切にお願いして譲っていただいたものである。現在は、2羽の直子を残し他界している。